美容外科的治療 No.5

ボトックス No.1  <多汗症> 2006/6/5
汗のシーズンになってきました。

汗をかかないようにする治療で、ボトックス注射というのがあります。このボトックスは、神経末端でアセチルコリンという物質を放出するところを阻害する薬です。顔のお皺を寄せない(表情筋をブロックする)のに、一番使われています。また、腋の下や手のひらなど狭い部分の汗を抑えるのに、傷が出来ず、とてもよい治療です。

ボトックスの一番の欠点は、加熱されていますけれど、
血液製剤の1種のアルブミンが入っていることにあります。加熱されていてもうつる可能性のある病原体で現在分かっているのは、クロイツフェルトヤコブ病です。言い換えると、肝炎やエイズなどのウイルスは加熱することでなくなっている。

皺治療に、年に2-3回の注射で効果が確実なので、私は時々打ってもらいます。加熱してあるアルブミンによるリスクは、交通事故にあうより低いと自分では思っています。でも、やらなくてはならない治療ではありませんので、リスクは良く考えてくださいね。

一度自分でボトックスを注射してみようとトライしました。私は近視でめがねなしだと、良く見えない。ペンレステープを貼って痛みによる誤差をへらし、めがね越しに、またはめがねなしで、挑戦してみたんですが上手くいかなかった。鏡の前で注射器で狙いを定めている図は、自分で考えても変ですけれど。 結局筑田先生に注射してもらいました。このときの実況中継が残っていなくて良かった。なすびナースはいなかったよね?

2-3月まえに、額の中央部分に強めに注射してもらいました。やや上がり眉になったのが、それなりに面白くて、気に入っています。ちょっと表情が変わったのか、患者さんに「何かやったでしょう!?」と聞かれます。他の人には良く分からないくらいのちょっとした変化で若くみえるのって面白いでしょう?

もうひとつの大きなリスクが
抗体産生です。ボトックスはたんぱく質なので、個体の感受性によって、ボトックスにたいする抗体が産生される可能性があります。抗体ができちゃうと、ボトックスは効かなくなる。ボトックスは、筋緊張性頭痛や裂肛や腰痛など、筋肉の動きを止めることで痛みを止めることもできる。かなり色々な分野の治療に可能性があります。効かなくなっちゃうとボトックス治療の可能性がなくなるので悲しい。今年の内科学会で抗体産生しないボトックスの開発が進んでいるという発表があったそうです。
ということで、汗の治療でも他の治療でも、
ボトックスを追加で(ブースターで)注射するのは最低限にしてね。また、打つ回数も最小限に。

汗でとても悩んでいる方が、年に1回今の時期に注射して秋まで快適に過ごすのには、悪くないと思っています。

もうひとつ、人の身体って面白いなと思う事があります。汗をかかないために胸腔鏡下(つまりファイバー、内視鏡)に交感神経節ブロックをするという方法があります。麻酔科や胸部外科で治療しているところがあるようです。これが、その部分の汗をかかないように治療すると、他の部位から(例えば身体の下1/2から)たくさん汗をかくそうだ。代償性発汗という。
私のところで、多汗症でボトックス注射をした方の中で、片方ずつ注射しないと、他の部分の汗が増えるとおっしゃる方がおいでです。代償性発汗が気になる方はそのお一人のみです。
多分、ボトックスで汗を止める面積は狭いからなのでしょう。他の方からはそのようなお話は伺った事がありません。

汗の治療でも、身体全体のバランスを考えなくちゃと、最近東洋医学的発想にはまっているDR.美夏でした。
書き終わる頃になると、ここにいないはずのなすびの声が聞こえる 
「ボトックスは努力がいらないからねえ。でも、努力しなけりゃ駄目なのよ。今日はファンデの後のお粉さぼったでしょう。化粧崩れしているよ。」

そうそう、多汗症のボトックス治療では、1cm間隔くらいでたくさんの場所に注射をします
痛がり屋の方は、早めにおいでになって、麻酔のクリームを塗りサランラップして1時間待って、その上でキンキンに冷やして打たせていただいています。時間に余裕を持ってきてくださいね。

そう、冷やすのって痒みにも効きますが、痛みを抑えるのにもとっても有効です。
どこからか声が
「痛み対策はやけに熱心なんだから」さて、退散せねば。ごきげんよう