皮膚科編 No.1

子供のスキンケア

<子供の夏のスキンケア 亜鉛華軟膏> 2006/6/12
蒸し暑くなってくると、寒くて乾燥しているときの、スキンケアとはまた別の注意が必要です。

亜鉛華軟膏って知っていますか?白い粘土のような軟膏です。この薬は、皮膚の表面でベールのように皮膚を保護します。どちらかというと、乾かすタイプの薬です。

これからの時期に、汗のたまりやすい肘やひざの内側、赤ちゃんの腿のつけねや首など皮膚と皮膚がくっつくところに、広く薄く塗っておきますと、あせもの予防になります。
赤ちゃんの便がゆるいときに、肛門周囲に広く厚めにぬりますと、オムツかぶれもしにくくなります。お腹の調子が悪くなって、お尻まわりがかぶれたときには、優しく洗い、タオルを押し当てるようにして水気をとり、広く亜鉛華軟膏を塗ります。
急に湿疹が悪くなったときに、薬を塗って、その上にリント布などに亜鉛華軟膏を塗ってかぶせるやり方を、密閉療法といいます。薬の効きをよくするための、ひとつのテクニックです。

また、炎症を抑える作用痒みを抑える作用があり、皮膚の治癒能力を引き出すのには、もってこいの薬です。 乾きやすいお子さんだと、その亜鉛華軟膏にプロペトというワセリンの精製されたものを混ぜますと、保湿と保護と両方の役割が果たせますので、重宝します。(混合製剤は不安定なので、長持ちはしませんけれどね。)

このようなシンプルなお薬の基材(薬を溶かし込むベース)を、スキンケアで使うことは、余分なものが入っておらず、かぶれる可能性が低く、私は使いやすいものだと思っています。プロペトも亜鉛華軟膏も処方薬で、ありふれた薬です。 大人も子供も、丁度今の時期を境に、冬のケアから夏のケアに変わってゆきます。皮膚になにかトラブルがある方は、一度皮膚科にかかりましょう。


<水いぼ> 伝染性軟属腫   2006/6/17

そろそろプールの季節。美夏クリニックは水いぼをとる子供たちが増えてきます。

水いぼは「伝染性軟属腫」といい、ウイルス(pox virus)によりうつるものです。プールや保育園幼稚園などで感染します。以前は、水いぼがあるとプールに入ってはいけないとされ、この夏前の時期になると、プールに入れないからとおいでになる子供さんが多かった。でも、水いぼのウイルスはどこにでもたくさんいます。そのため水いぼがあれば、プールに入っては駄目よという施設は減りました。

水いぼのウイルスは常在菌ではありません。でも、もともと健康な皮膚であれば、あまりたくさん水いぼが出来ることはない。それなのに増えてしまうのは、バリアが破綻している皮膚を、爪などで引っかいて傷から侵入するのでしょう。また水いぼの出来始めってとても痒いんですよね。掻いてしまうのは仕方がないことだと思います。
大人の皮膚は、子供の皮膚に比べて、強くなっていて、たいていの場合感染してもいぼにはならない。たまーに大人でも出来ている人はいますが。

皮膚そのものは、本来角層(きちんと整列した敷石状の層。垢となって落ちる前の生きていない細胞で出来ている)と皮膚表面の皮脂天然保湿因子などで守られています。その身体の防御壁「皮膚」というバリアは、洗いすぎこすりすぎ、または湿疹などで壊されます。そうなると、水いぼなどのウイルスは身体の中に侵入しやすい。バリアを破ってはいりこんだウイルスは水いぼを作ります。
だから、乾燥肌(小児湿疹やアトピー性皮膚炎など)や掻いてしまう肌には、当然水いぼが出来やすい。とびひが出来やすい理由も同じです。

水いぼを取らなくてはならないかどうかは、議論があります。数個おとなしくあるだけならば、私は経過観察でよいと思っています。
ただ、バリアの破綻したざらついた肌のばあいには、急速に広がることがあります。身体中に数百個水いぼをお持ちのお子さんを治療したことがあります。増え始めたときには、私は治療なさった方が良いように感じています。

治療のステップとしては、まず保湿剤などでバリアの破綻を修復します。水いぼを取る時に、ウイルスをばら撒いてしまいます。周辺の皮膚がウイルスの侵入を受け入れやすい状態であれば、広がってしまう。また、湿疹のある皮膚では、水いぼなのか湿疹なのか分かりにくい場合があります。

そのために、
耕された畑に種まきをする(=バリアの破綻した荒れた皮膚で水いぼをとる)のではなくて、まず舗装(=保湿してバリアを強化)しましょう。 つぎに、水いぼ摘出。
私はペンレステープという麻酔の貼り薬を摘出前1-1.5時間まえに貼ってもらって、痛みなく処置できるようにしています。このテープは優れもので小さい水いぼでしたら、ほとんど痛みを感じません。
水いぼが多いお子さんではなかなか1回では処置できません。1度で取っても見えなかったものが再度大きくなってきたり、新しいのが出来たり、普通2-3回通院していただくことになります。
お近くの小児科か皮膚科の先生に相談してみてくださいね