■ニキビ
ニキビは、毛穴に皮脂(あぶら)が詰まることから始まります。
詰まった皮脂+菌→赤いニキビと単純化すると分かりやすい。
治療は、
(1)皮脂を作らないようにする治療
(2)毛穴に詰まった皮脂を追い出す治療
(3)菌を抑える治療
に分かれます ニキビはコメド(面疱。皮脂と角化物からなる)に常在菌が炎症を起こしておこる。

1.皮脂腺の働きを抑え、皮脂が作られないようにする。

皮脂腺は男性ホルモンのアンドロゲンが支配しています。ホルモンバランスを整え皮脂腺の働きを抑えるために、その方の状況に応じて、漢方薬やピル、スピロノラクトン、ジオールなどを使います。
2.詰まった皮脂を追い出す。
a)毛穴を詰めないスキンケアがとても大事です。
ファンデやご自分の手で毛穴から出ようとしている皮脂を押し込むのは逆効果です。スキンケア指導をしています。やりすぎないスキンケアが大事だと思っています。
b)詰まった毛穴の中身を追い出す。
ディフェリンやトレチノインという薬が効果的です。8~12週間きちんと必要量を塗ることが大事です。新しい皮膚を作る細胞の層(基底層)に働きかけて、少しずつコメドを上へ押し上げ最終的に排出させます。経過中深い部分にあったコメドが浮いて目立つようになったり、乾燥や赤み、痒みが出ることがあったりします。
c)ケミカルピーリング
薬がなかなか使いこなせない方、妊娠中の方、治療の始めでとりあえずコメドを排出させたい方に有効です。グリコール酸や乳酸などのフルーツ酸を皮膚の表面に塗り、その後コメドを排出させる処置(針をそっと刺して中身を抜く)をします。ピーリング石鹸を使うというやり方もあります。
3.常在菌を抑える

皮膚の上には普通に多種類の微生物がいます。お庭に雑草が生えているようなものです。普通に存在する微生物を常在菌といいます。常在菌が悪さをするのは、皮脂が毛穴に詰まっているとか、やけどなどの傷があるとき、湿疹があるときなどで、健康な皮膚ではおとなしくしています。勢力が強くなりすぎて、赤いニキビ炎症性座瘡が増えていれば治療をします。赤いニキビを作るアクネかん菌やぶどう球菌、マラセチアなどは、普通に皮膚に存在します。雑草と同じように、また普通に増えてきます。
a)抗生物質や抗菌薬を使う。
塗り薬では、ダラシンTゲルやアクアチーム、飲み薬では、ミノサイクリン(ミノマイシン、ミノペンなど)、ロキシスロマイシン(ルリッド、ルリシンなど)など。
薬を使えばその薬に効く微生物はいなくなります。薬に効かない薬剤耐性菌(MRSAなど)が増えてくるリスクがあります。立ちくらみや下痢など副作用が疑われる症状が出現したらご連絡ください。
b)抗真菌剤  
髪の生え際や胸や肩の赤い小さい揃った感じの赤いニキビは、マラセチア毛包炎のことがあります。ニゾラールという塗り薬かイトラコナゾールというのみ薬が効きますが、1-2か月間かかります。
c)光治療、レーザー治療をする 
赤い色に反応する光を照射すると、熱で殺菌されます。赤い小さいニキビが多数あるときには光治療で5250円/回、大きい赤いニキビがあるときには、ポイント照射でロングパルスヤグレーザー(2100円/回 大体10-20か所) がお勧めです。
4.身体全体の元気
睡眠不足、過労、食生活の乱れなど身体全体の免疫力が低下しているとどんな病気も治りません。
5.ニキビもニキビ跡の目立つ色も一緒に治療したい
トレチノイン療法やオバジのクリームプログラムnu-dermで、ニキビそのものとニキビ痕の色を同時に強力に治療するという方法があります。トレチノインは濃度が0.025%~0.4%と選択できます。そして乳酸などの皮膚表面をピーリングする薬を同時に使用して、皮膚の新陳代謝を上げて毛穴のつまりとメラニンを強力に追い出します。自費の診療になりますが、早くきれいになりたい方にはお薦めです。 ニキビは慢性で再発性の疾患です。日常生活を送る上で、どんなスキンケアをするのか、どういう化粧をしたらよいのか、再発させないためにはどうしたらよいのか、みな一人一人異なります。からだの内からの影響(ホルモンの状態やストレスなど)、化粧やスキンケアなどの生活習慣、食事などの栄養状態が、皮膚の状態に直接影響します。治療をどのように継続してゆくか、化粧をどうするか、とても大事だと思います。

*皮膚について*
皮膚は、基底細胞という基底膜直上の細胞が分裂し、上へ上へ押し上げられて、最後に垢となって脱落します(角化といいます)。大体1回生まれ変わるのに6週間かかります。皮脂は脂腺で作られ、毛穴より排出されます。脂腺は男性ホルモン(アンドロゲン)の支配を受けています。
*分類*
白ニキビ;毛穴がつまり皮脂が貯留している状態。触ると膨らんでいるのがわかります。
黒ニキビ;皮脂が表面に顔をだして空気にふれて黒くなったもの。
赤ニキビ;常在菌による感染炎症を引き起こした状態。
*日常生活で注意していただきたいこと*
<スキンケア> 
必要充分最小限のスキンケアがお勧めです。皮膚に塗る薬剤や表面活性剤は少ない方が、安全です。かぶれの機会も減り、皮膚の上を指やコットンで皮膚をこすることも減り、好ましいと考えています。化粧品の目的は一般的にファンデを載せた皮膚を美しく見せることです。美しく健康な肌を作るには、塗りすぎない事です。
<洗顔>
手やタオルでこすらないように。
ダブル洗顔で、日本人女性の7-8割は乾燥肌になっているそうです。クレンジングはしないようにして、洗浄力のある純石けんを良く泡立てて丁寧に1回洗いしましょう。(1回の石鹸洗顔で落ちるお化粧が大事。)石けん素地のみでできた香りのない純石鹸(牛乳石鹸の無添加のものなど)(洗浄力は保たれ、かぶれにくい)を充分に泡立てて1回の洗顔が皮膚を傷めません。オイルクレンジングは脂漏性皮膚炎の原因になりやすいのでお勧めできません。
<触らない>
こすったりいじったりするとしみや傷跡になります。また細菌をばら撒きし、炎症や色素沈着がひどくなります。なるべく首から上は触らないようになさって頂いて、処置は医師や看護師に任せましょう。そのための道具が皮膚科には準備されています。
<ファンデーション>
パウダーか、薄付きのパウダリーファンデーションがお勧め。日焼け止め効果があるものがよい。
<保湿>
保湿しすぎると、皮膚の新陳代謝が遅くなり、ニキビやくすみの原因になります。顔の部位や季節で必要な保湿は変わりますが、必要以上に保湿しないでね。また保湿剤は、ローションタイプのものから乳液、クリーム、オイルがあります。ニキビの方は、オイル分を減らし水分で保湿するローションタイプの化粧品がお勧めです。
<カバー力の高い化粧をしたときには>
特別な機会に、きっちりカバ-力のあるものでベースを作りフルメイクの化粧をした時には、きちんとファウンデーションが落とせるクレンジングが必要です。その後石鹸による洗顔を丁寧にやさしく施行してください。メイクでも洗浄でも、どちらも皮膚をごしごしこすると色素沈着の原因になります。皮膚を摩擦しないようにお願いします。
<紫外線予防>
ニキビあとに紫外線があたると色素沈着を残しやすい。サンスクリ-ンは日常生活用のSPFが20-30くらいのローションタイプのものと、アウトドアや紫外線を避けられない時、汗をかくときは、ウォータープルーフのSPFが40以上の製品を使い分けて下さい。一日に何回か塗り足すようにしましょう。