英国ロイヤルオペラの椿姫の映画を日比谷で公開していると知り見に行きました。
ヴェルデイの「椿姫」って音楽の美しさ、脚本の見事さ、変化に富む飽きさせない構成で、オペラの中でもどなたにも好かれるし、わたくしも大好きな演目です。飽きるほど見たはずと思いましたが、ウェブサイトで宣伝の椿姫の音楽を聴いたら、連日の疲れも忘れて見に行ってしまいました。
演出はリチャード・エア 贅沢な場面が続きます。最近では簡素な舞台も多いのですが(つまり費用がかからない)、大道具も小道具も贅沢で出演する人数も多く、コーラスもバレエも洗練されていて(ROHだもの!!)衣装も豪華絢爛でした。せっかくのオペラだもの、夢のような世界が楽しみですよね!!主人公のヴィオレッタは エルモネラ・ヤオというアルバニア出身のソプラノが出演していました。ときどきマリアカラスと重なってしまうような歌があり、表情たっぷりで椿姫になりきってました。きっとカラスの歌を数限りなく聞いて、歌を練習したのでしょう。
わたくしは悲しいのや怖いのがかなり苦手です。刺激が強いのはダメなの。椿姫もトスカも第3幕は見たくないときがあります。オペラは歌を主に楽しむものだから、迫真の演技である必要はないと怖がりでつい思ってしまうのですが、ヤオさんはそんな思惑からは程遠かった。宴会の場面では蓮っ葉だったり、やや躁的なはしゃぎっぷりだったり、なのに一転一人の場面になると娼婦である自分の孤独を切々と歌い上げ、愛を求め、死を怖がる。愛情を捧げる純朴なアルフレードの愛を受け入れたのに、その父のジェルモンの懇願で悲しみのうちに身を引き、結局結核で亡くなります。うらびれたパリのアパートでとうとうアルフレードに会えて、うれしくて仕方がないのにでも死んでいかなくてはならない。ヤオさんは、髪を振り乱し頬がこけ真に迫った病人姿で真に迫っていて、すごいの一言でした。
真っ白い衣装から、悲しみの場面では真っ黒のドレスになり、悲しくて仕方がない第三幕では白いネグリジェスタイル。ライトニングもうまいのよね、、、三幕では、結核で悲しくも亡くなってしまうのですが、まくらやタオルに喀血した跡があったり、その赤と衣装の白と舞台全体の黒と、本当に素晴らしい舞台で参っちゃうな(ノックアウトされちゃったな)って感じでした。
そして若いアルフレードの身持ちを心配して、ヴィオレッタとの仲を割きにくる父親ジェルモンがなんとプラシド・ドミンゴ!!! テレサ・ストラータスの椿姫ではアルフレードをやってたのにと、びっくりしました。ドミンゴって、指揮をしていたのは知っていたのですが、バリトン歌ってるとは知らなかった。お行儀のよい端正な田舎紳士の雰囲気で、相変わらずの美声で、ヤオさんに切々と息子と娘の幸福の為に身を引くように訴えています。敵役なんだけど、パパとしては仕方ないよなあって説得力もあって、共感できるジェルモンでした。