昨日は「ぜん息および食物アレルギー講演会(多摩地区)」という講演会に参加しました。今日は、そのときの講演内容からお話しますね。講師の先生は、武蔵野日赤 吉澤正文先生と同愛記念病院 向山徳子先生でした。文責は石井美夏にあります。
東京大気汚染訴訟で和解したのを受けて、大気汚染医療費助成制度が昨年8月に改正されました。気管支ぜんそくとその合併症の患者さんの医療費のうち自己負担分が東京都が肩代わりすることになりました。詳しくは こちら 。
1990年代まで日本で、1年間に6000人くらいの方が気管支喘息で亡くなっていました。喘息は死亡する事がある。喘息の有症率が小児では6%、大人で3%で、決して希な病気ではありません。2006年になると1年間の喘息による死亡者数は2778人と半分以下に減少したのですって。
なぜ喘息による死亡が減ったのか?大きな理由は吸入ステロイドが普及したことにあるそうです。1日に1-2回のステロイドの吸入で喘息の患者さんを良い状態でコントロールできるようになって、死に至るような大きな発作を上手に管理すれば避けることが出来るようになった。
以前は気道がとても敏感になって、機能的に空気の通り道(気道)が狭くなってしまうのが喘息だと考えられていた。今の考え方は、喘息の本体は気道の炎症である。その炎症が続くと、不可逆的に気道のチューブそのものが硬く、内腔も狭くなってしまう。そうなると、空気の出入りを良くするための薬が効きにくい状態となってしまう。
吸入ステロイドは、直接気道の炎症そのものに働きかけます。気道を非可逆的に固く細くしてしまう前に、その炎症をコントロールことができる。 そして実際喘息による死亡者数が半分以下になった。
薬って、必要がない所には届かず、病気の起きている部分に直接作用して効果が発現し、副作用がミニマムである薬が一番よい薬です。吸入ステロイドは、その条件を満たしている。
皮膚科を診療していると、塗るステロイドを嫌う患者さんをたくさん拝見します。外用ステロイドも、具合のわるい皮膚に直接作用し、全身的な影響はほとんどない薬です。種類がたくさんありますので、使い方にはコツが必要ですけれど。
薬は、使いこなすもの。 言い換えると、使ったほうが得かどうかがすべてだと思います。好きだとか嫌いだとか、何となく怖いだとか、あまり根拠なく拒否なさる方は、使いこなすという言葉をご存じないのかなって思います。