原発作業員の方への造血幹細胞採取の続報がありましたよ

以下は原文のままです。

 原発作業員を守るため、希望される方に自分の造血幹細胞を早急に採取・保存しておける体制を整えました。希望者はいつでも虎の門病院で可能です。ご連絡ください。

虎の門病院血液科 部長 谷口修一
港区虎ノ門2-1-1
TEL 03-3588-1111
taniguchi-s@toranomon.gr.jp

1、万が一、想定外の大量被曝(想定の100~1000倍程度)に遭った場合も、自分の造血幹細胞が事前に凍結保存してあれば、それを移植することで救命できる可能性があります。
2、他人からの造血幹細胞移植後には移植片対宿主病(GVHD)という重い合併症がおこりえます。自分の細胞ならその心配がありません。
3、造血幹細胞採取には従来の方法で約5日かかります。未承認薬を併用して用いることで1~2日へ期間短縮することも可能です。
4、希望される方は、虎の門病院で自己造血幹細胞の採取と凍結保存が可能です。いつでもご連絡ください。

記者会見
日時: 2011年3月29日(火曜日) 午後2時~
場所: 虎の門病院 8階 第一会議室
説明者: 谷口修一(虎の門病院血液科部長)、
豊嶋崇徳(九州大学病院遺伝子・細胞療法部准教授)

 福島原発の作業に従事されている方々に胸を打たれている。我が身顧みずとも、なんとしても地域住民ひいては日本国民を守りたいという強烈な使命感で業務に従事されている。
 我々医療者は、万が一の不測の事態でも、これら作業にあたってくださる方々の命を絶対に救命するという覚悟で、準備を整え実行せねばならない。
 もちろん、作業員の放射線被曝の管理は適切になされるべきである。しかし、万が一の不測の事態があった時に、我々に何ができるか熟慮を重ねた。

 急性の放射線障害は造血機能に重大な影響を及ぼし、血液細胞(白血球・赤血球・血小板)が不可逆的に産生されなくなり、これが放射線障害に伴う死亡の主因となる。この場合の治療には、造血幹細胞移植治療が必要となる。
 高度な危険状態に置かれる可能性のある原発作業員から事前に幹細胞を採取・保存してあれば、仮に不測の事態となり、造血機能が危機に陥っても、この幹細胞を点滴で輸注する自己造血幹細胞移植治療で回復し、急性放射線障害に伴う死亡を回避し救命できる可能性がある。他人から骨髄移植をすると、GVHDなどの重い合併症が出るが、自分の幹細胞ではその心配は不要だ。
 世界中の専門家諸氏からその有用性が積極的に指摘されている。Powles R博士(ヨーロッパ骨髄移植学会原子力事故委員会委員長)、Gale RP博士(元国際骨髄移植登録機関代表、チェルノブイリ・ブラジルの放射線事故時も率先して治療に参加した放射線障害医療の第一人者)、Champlin R博士(米国MDアンダーソンがんセンター)らも高く推奨しており、この福島原発事故を受けてLancet誌でも取り上げられる予定である。また、BBCニュースでは、ヨーロッパの移植センターが日本からの患者受け入れ準備を進めていることが報じられている。Gale博士は既に来日しており、記者会見で「移植は他人からでもできるが、遺伝子の違いによるGVHDと呼ばれる合併症の危険などがあり、場合によっては命にかかわることもある。この危険は、自分のものを使えば避けられる。なので、作業にあたる人は、前もって自分の末梢血幹細胞を採取、保存しておき骨髄移植に備えておくべきだ」と述べている。

 従来から広く行われている方法では、実際にG-CSFを使用して幹細胞を採取するには4-5日かかり、1-3日目はG-CSFを筋肉注射するだけである。この採取方法は国内外で実績があり、安全性は既に確認されているものの、やはり重要な任務を前に時間がかかりすぎると思われる。そこで、採取期間を短縮する必要がある場合は、もう一つの選択肢として国内未承認薬を併用する方法も準備した。
虎の門病院では海外で使用されているが国内未承認のモゾビルという薬剤の使用を考え、既に当座の50人分の輸入の手続きをとり成田空港までは届いている。この薬剤とG-CSFを使用して、1泊2日(もしくは2泊3日)の入院で採取・保存する計画である。初日は午後入院で、事前の検査を行い、夜12時頃このモゾビルを皮下注射で投与し、翌朝G-CSFを皮下注射し、9時頃から採取を開始、12時頃に終了し、夕方には安全性を確認して退院という方法で、既に当院では準備が整っている。これで6-7割の方は目標量が採取できるが、達しない場合はもう一泊していただく。もちろん未承認薬を使用するため、関係諸氏にその効果と安全性については十分な説明を行い、一定のコンセンサスが得られる必要がある。既に海外での広い使用実績があり、また民族的に近いとされるアジア地域でも使用されている薬剤であるので、この緊急時に用いることを検討すべきである。ここで考えているのは、保険診療ではない。作業にあたる人を医学的に保護しようという『事業』である。是非、政治判断で迅速な判断をお願いしたい。

 虎の門病院では施設の倫理委員会の審査を受け、いつでも実施できるようスタンバイしている。
希望者がいれば、いつでも虎の門病院で、上記の予定で造血幹細胞の採取と凍結保管が可能である。採取にかかる費用については、保険診療でないため難しい問題もあるが、可能な限り実費部分を寄付などでまかなえるように交渉中である。
 この文章はいたずらに国民の不安をかき立てる目的ではなく、不測の事態を危惧しながらも決死の覚悟で原発最前線の業務に従事される方々を守らねばならないという一心で記載した。関係者の英断を期待する。

*******
 私の家族がこの業務に携わるなら、万が一の不測の事態に備えて、自己造血幹細胞を必ず保存します。そう思うことをやらないのはおかしいです。これまで関係各所に実施の必要性を訴えましたが、全く動きませんでした。このため、広く皆様方にお知らせしたいと思います。宜しくお願い申し上げます。

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