前回の続きです。
脂漏性皮膚炎は皮膚の常在菌であるマラセチアが、発症因子なのか増悪因子なのか議論があります。言い換えると、マラセチアが原因であるのか、たまたまマラセチアの多い時に脂漏性皮膚炎が起こりやすいのか、結論が出ていません。
でも抗真菌剤を治療に用いると症状が良くなる場合が結構あります。春になると脂の分泌がよくなるのか、生え際から額、眉の頭の部分、鼻と鼻の左右が赤みを帯びてざらざらし、場合によって小さめの赤みが強い小さいにきびが出来る方がおいでです。このような時に抗真菌剤が割りに結果がよい。
美夏Dr.が考えているポイントは、1日に2回塗ること、お顔であれば3週間、頭皮ならば4-6週間続けること、マラセチアの好む脂分を化粧品などで足さないことの3点です。
ところで顔に脂漏性皮膚炎があるときに、美容皮膚科的治療をすることがあります。
脂漏性皮膚炎があって毛穴が開き気味の患者さんに、ヤグレーザーによるカーボンピーリングをします。カーボンローションは毛穴にやや詰めるようにして塗布し、1064nmの波長のヤグレーザーを10Hzくらいで照射します。カーボンにレーザーがあたると熱が発生し、毛穴が収縮し、多分その熱でマラセチアも減るのでしょう、結構きれいな皮膚になります。
カーボンピーリングでは音にびっくりなさる方がおいでですし、炭火焼き鳥のにおいだと言われることもあります。そんなに痛い治療ではありませんので、結果が良かった方は3-4週に1回くらいで続けてみることをお勧めします。
赤みが強い場合には、IPL(光治療)もよい。IPLであっても、光のエネルギーは色に反応して熱が出ます。その熱が血管を収縮させ赤みを減らすのと同時にマラセチアも抑えているように見受けられます。美夏クリニックで使用している光治療器=IPLは、メディラックスとルミナスワンのフォトフェイシャルファーストの2台です。
抗真菌剤で良い結果が出ますので、無理をして美容皮膚科的治療をする必要はありません。でも抗真菌剤でかぶれてしまう人や毛穴や赤みを減らしたい人には悪くない選択肢でしょう。
ただ、赤ら顔の赤は血液の色です。血管は炎症が続けばすぐまた拡張して赤みが復活してしまいます。こすらないように、炎症を起こさないようにするケアが必要です。写真はMAXとよばれるヤグレーザーです。この機械を使用したレーザーピーリングをmaxピーリングとかスペクトラピーリングと呼ぶ場合があります。
以前書いたレーザーピーリングの記事はこちら 美夏クリニックブログにアップしなおしました。
ついでに毛穴の治療はこちら どちらも傷になってしまった毛穴の治療ではありませんよ。
今日は、たまたま小児湿疹の患者さまだったんですけれど、ワセリンは保存料が入っているのではないか、ステロイドは絶対嫌だ、水いぼの摘出は問題があると思うとおっしゃる方がおいででした。色々ご心配なさるのは判るのですがーーー。同じ議論が毎回蒸し返されるのは、限られた診察時間のなかではかなりストレスです。
保存料などの化学物質には種々の問題があります。ただ、ジュースに例えれば保存料の入ったジュースが良いか、腐っている可能性があるジュースが良いか、フレッシュで無農薬有機栽培の果物をその場で搾ったジュースが良いかの選択になると思います。フレッシュで丁寧に栽培した果物から自分で絞ったジュースが良いのはあたりまえですが、高品質のものにはそれなりの高価格がついてしまいます。
医療は安全である必要がありますけれど、作用するものには副反応副作用の可能性がある。そして結局は治療した方がとくか治療しないほうが得かという選択肢なので、リスクを過大視して、メリットを失うのはあまり良いことではないと思います。高い品質を支えるためには、高いコストを負担する覚悟も必要でしょう。そして全体の利益を考える視点が、医療には必要だと思います。
繰り返し述べさせて頂いておりますが、予防接種においてもリスクはあります。でも例えば天然痘のように疾患そのものが無くなってしまえば、天然痘にかかる可能性は極めて小さくなります。リスクをとらずにメリットを手に入れることは出来ない事を理解していただきたいと思っています。
後で思い返すに、ジュースの例えはあまり良くなかったですね。化学薬品を怖がっても、皮膚科や形成外科の診療は西洋医学にのっとっています。薬が使えないのでは、医師はその役目が果たせません。