昨日1月19日に武蔵野市民文化会館で、ベルガモ・ドニゼッティ劇場の引っ越し公演「愛の妙薬」を見てきました。
「愛の妙薬」はドニゼッティが作曲したオペラです。
地主の娘アディーナに、おひとよしのネモリーノは恋をしています。でもアディーナはすげない。それでネモリーノはいかさま師のドゥルカマーラから、「愛の妙薬」つまり媚薬を購入します。それでドタバタと色々な出来事が起こった末にめでたくアディーナとネモリーノが結ばれるという喜劇です。
最初から最後まで楽しく見られて、憂さが晴れてしまうようなオペラです。
指揮がモンタナーリさん。遠くから拝見すると黒い衣装にスキンヘッドに見えました。短髪だったのかもしれません。抑え気味のテンポで、バランスのよい演奏でした。何せ曲目が軽快なので、思わず指揮も走ってしまいそうなのに、そんな事はありません。 途中突然ピアノが聞こえてきてびっくりしました。もともとピアノの場面だったのかどうか知りませんが、モンタナーリさんが弾いておられました。管弦楽の音とピアノの音って、すこし質が違うんですよね。
アディーナがリンダ・カンパネッラさん。小柄でキュート。コケティッシュな地主の娘の役にぴったり。役と見た目や声がぴったりあっておられましたよ。ずっと歌いっぱなしで、最後はちょっと疲れ気味のように見受けられました。
ネモリーノはロベルト・イウリアーノさん。私はパバロッティのネモリーノがとても印象に強い。パバロッティは朗々とした高い美声で、ネモリーノ役もぴったりで素敵なんですけれど、アディーナに翻弄される素朴な田舎の青年には見えない。イウリアーノさんは、ちょっといじけ気味のネモリーノ、妙薬ならぬ安ワインで陽気になるネモリーノになりきっていました。2幕後半の「人知れぬ涙」は、感情をこめたとても素晴らしいアリアで、このイウリアーノさんのファンになりました。
ドゥルカマーラがマッテオ・ペイローネさん。登場の時から調子のよい曲です。彼は何にでも効くという薬を販売しています。私も欲しい!!ペイローネさんは身長が高い方で、ちいさなカンパネッラさんを見下ろすように歌います。このドゥルカマーラ の歌はいつ聞いても楽しくて大好きです。ペイローネさんをひと目見てドナルド・サザランドを想い出しました。舞台化粧で眉が大きな山を書いていて、そう思ったのかしら?
舞台装置の色合いが、田園地帯の緑と土の色。幕が上がったときから、はっとするような美しさでした。(レニングラード歌劇場のオネーギンの舞台にあった透明感と緊張のある美しさとは別の美しさです。)
イタリアは北の方はしっとりした色合いで、南は乾燥した色なんですよね。20年も前に旅行した時のことを想い出しました。
とても素敵なオペラで、カーテンコールはキャストたちの惜しまぬサービスもあったにせよ、観客は皆立ち上がり拍手がやまず、後味がとても良かった。 北イタリアに行く機会があったら是非ベルガモに寄り、ドニゼッティ劇場に行こうと思いました。そして「愛の妙薬」は元気がないような時、笑いが必要な時に見るにはとても適したオペラだと思います。