武蔵野市民文化会館でエフゲニー・オネーギンを見てきました。
わたくしは、ヴェルディが大好き。イタリアオペラをどちらかというと好み、このオペラは多分初めて。
チャイコフスキー作曲のこのオペラはプーシキンの同名の小説をもとに作られています。
クラリネットを始め木管の音がとても印象的。チャイコフスキーのロシアの大地を思い起こさせる少々大ぶりな旋律が全編を通して、楽しく聴こえました。オペラではアリアが記憶として残る事が多いのに、今回はどちらかというとオーケストラのほうが耳に残っています。主人公の気持ちの移り変わりがチャイコフスキーらしい旋律で、分かりやすく伝わってきます。
タチアナという田舎の文学少女が、オネーギン=タイトルロールに出会い、切々と恋心を歌い上げるアリア(手紙の場)が第一幕のクライマックスです。タチアナ役のタチアナ・リュブゾワさんは、声量がたっぷり、高音で少し耳障りになる部分もありましたけれど、ゆったり聞かせてくれました。恋が順調ならオペラにはならないので、タチアナはふられます。
幕間で「きっとここにいるご婦人がたは年齢に関係なく、自分がタチアナだった時のことを思い浮かべながら聴いているのね」って言った途端隣の席にいた男性が噴き出して顰蹙ものでした。女性だったらたとえば○○歳になった今だって自分がタチアナだと思って聞いているのに なんて思っていました。
第二幕は、生一本で真面目なレンスキーはオネーギンの幼馴染。レンスキーの婚約者のオリガに些細ですが悪ふざけが過ぎたオネーギンはレンスキーと決闘することになります。レンスキーが、自分の苦悩と願いを歌うアリア(どこへ去ったか、我が青春の黄金の日々よ)がしみじみと印象的でした。オネーギン自身決闘について懐疑的なのに、大事な幼馴染を殺してしまいます。ちなみに、プーシキンも38歳で妻に言い寄ってきた男と決闘して亡くなっているそうです。
第三幕は、決闘後放浪の旅にでて帰ってきたオネーギンが、公爵夫人となって威厳のある洗練された美しいタチアナを見て、今度は言い寄って退けられます。途中タチアナの夫のグレーミン公爵が「恋は年齢にかかわりなく」を歌います。
こういう時はたいてい若い女性と老人というのが私としては少々癪に障ります。どなたか美しい場面で「美しい老婆と若い美青年」ってのを作ってくれないかしらねえ?
ロシアの舞台は、バレエでもオペラでも色彩がとても素敵です。光と影、色の統一感、大道具小物の使い方ーー簡素で単純な装置なのに夢の世界です。多用されたレースのカーテンと揺れる光がとても美しく、隣席にたまたまいた男性は安上がりの演出だけど効果的ですねなんて、夢を砕く顰蹙ものの発言を繰り返していました。
レニングラード国立歌劇場のオペラは、私が拝見したなかで、舞台装置の美しさを含め、とても洗練度の高いものだったと思います。その中で難点をいうならば、歌手の印象が薄かったように思います。レンスキー役のドミトリー・ゴロヴニンが私には、一番良かった。自分の好みなのかもしれませんがーー。