芸術の秋
武蔵野市民文化会館で、 「レンドヴァイ&フレンズ」という弦楽五重奏のコンサートを聞いて来ました。 プログラムのごあいさつでは、レンドヴァイはハンガリーのブタペストでロマ(ジプシー)の音楽家の家庭に生まれ、民族伝承の音楽文化の中で成長し、クラシック音楽家になったんですって。
そう、それで演奏会は 悪魔のトリル から始まりました。メルクスの天上の悪魔のトリルか、マンゼの悪魔が隣にいるトリルかって前回お話しましたよね? そうね、メルクスでもマンゼでもない、ひょっとしたらどこかヨーロッパの駅の構内で、もしかしたら街角で耳を澄ませたら聞こえてくる 悪魔のトリル ーー。
そしておなじみヴィヴァルディの四季 冬と夏 です。 あら?確かに四季なんですが、でも四季ではないの。通奏低音のリズム感が鋭くて、それなのに旋律は美しい。四季って良かれ悪しかれイ・ムジチの四季がどうしても頭から離れません。イ・ムジチ四重奏団の旋律や和声とは違う。もっとジャズや現代音楽に近いのかな??
美しいチャイコフスキーの弦楽セレナーデやクライスラーのロスマリンの後、これまた感嘆する美しさのJSバッハのG線上のアリア。 ロマの香りがするーー。ついそう思って聞くからかもしれません。
その後は東欧の香り、地域の色合いが濃厚なチャルダッシュや伝承音楽、そしてピアソラーー
どれを聞いていても、わたくしは自制心がなければ踊りだしていたと思います。どうしてみんな席に静かに着いていられるのか??
音楽を聴いて、それがいつも生活の中で喜びとなる人たちの音楽、嬉しいことがあればその音楽とともに踊り、悲しければ音楽で慰められる、そういう音楽ーー。
心の動きと音楽がとても近いのでしょう。感覚的にとても現在に近くリズミカルで、それでも普遍的な美しさ が損なわれずに人の気持ちを動かすーーそんな演奏会だったように思います。とても楽しくて、音楽を楽しむ幸福をかみしめることができた一夜でした。 5人の弦は息の合うセッションで、レンドヴァイのカリスマ的と言えるようなヴァイオリンの音色とやりとりしているのが、とても素敵でした。
聞きながら、オペラの「こうもり」や映画の「屋根の上のバイオリン弾き」、ミッシャー・マイスキーの音楽などを思い返していました。ロマの音楽は、ちょっと別の香りです。興味のある方はぜひご自分で聞いてみてください。(クリニックにもレンドヴァイの音楽をと、アマゾンで注文しました。来週には届くことと思います。)
武蔵野文化事業団 はこんなに楽しくて質の高いコンサートを、2000円とか3000円みたいな価格で提供してくれます。プログラムは単色刷だし、飲み物もシャンパンやワインはない。でも何回も聞きに行けて、お勧めです。すぐチケットが無くなってしまうのが難点です。内緒にしておいて下さいね。