貧血は女性に多い。でも貧血を心配して受診なさる多くの方は、貧血とたちくらみ(気が遠くなったり、目の前が暗くなる)の症状を混同しておられます。
では貧血とは何か?
血液学的貧血は、酸素を運ぶ赤血球の中のヘモグロビン(血色素)が減少している状態です。女性ではヘモグロビン値が12g/dl以下ならば、貧血と呼びます。
へモグロビン値が正常の半分であっても、それが急激な出血によるものでもない限り、立ちくらみはまず起こりません。 むしろ、疲れやすい、運動時の息切れ、だるさなどが貧血の主な症状です。
では、気がとおくなったり、目の前が暗くなったりする、たちくらみや失神の症状は、なぜ起こるのでしょうか? それは、脳を循環している血流が一過性に障害され、脳細胞に必要な酸素が不足することによります。機序には多数の原因がかかわっています。
若い女性に多い原因を説明します。それは、”起立性低血圧”、”血管迷走神経反射”です。
私たちの体では、血液の3/4は静脈血として巡り、またプールされています。残り1/4が心臓というポンプで圧力が加えられ、動脈血として身体のすみずみへ酸素を運搬しています。 脳、肝臓、腎臓などへの循環血液量は、自律神経反射によって微妙に調整されています。
疲れが重なったり、睡眠不足、ストレスが多くなったりしますと、この自律神経の調節機構がうまく働くなり、脳の循環が一過性に障害され低酸素状態となり失神症状が出やすくなります。 若い人の失神やたちくらみは寝ているときには起こらず、座わっている時、立っている時に起こる事が多いのです。 多くの場合、大きな病気につながることはありませんし、後遺症が残ることもありません。
高齢者では、動脈硬化、心疾患などによる循環不全が原因として考えられます。心疾患、糖尿病、脳梗塞などの重篤な病気の前触れであることも有ります。詳しい検査をして、治療が必要になることがあります’。