「瘀血」と聞いて意味がわかる人は少ないのではないでしょうか。 それも当然で、医師の中でも、東洋医学に関心がある方以外は、患者さんに聞かれて一瞬戸惑うと思います。
東洋医学では、私たちの体の健康は気、血、水の良好な運行によって保持されていると考えます。
血は水と、食物のエッセンスから作り出され、脾と胃の作用により血管をめぐり体の隅々まで栄養を与えると考えられています。 そして、血液循環は心臓と、生命のエネルギーと理解される気の作用によって運行されます。
瘀血とはこの血液循環が障害されている病的状態をいいます。よどんでいる状態といえば、分かりやすいと思います
瘀血がありますと、多様な症状が認められます。例えば冷え性、便秘、痔、腰痛、肩こり、生理痛、頭痛そしてメマイなど、これらは日常よく見られる症状です。 それに、更年期障害なども関係している事が多いのです。
この様な方では唇の色は悪く、舌を見ますと暗く、舌の裏の静脈が太く黒ずんでいて、ひどい状態では鬱血斑点が見られます。 肌も浮腫み荒れてくすんだ色になり、眼の周りにクマが目立ってきます。
痔出血なども血液巡回障害の一つの所見です。 治療には西洋薬はあまり効果が期待できません。
東洋医学ではこの瘀血を重要視しているため、多くの治療手段を持っています。 鍼治療は即効性で副作用も無く安全です。
また漢方薬もとてもよく効きます。 漢方薬では駆瘀血剤と呼ばれる桂枝茯苓丸、大黄牡丹皮湯、桃核承気湯、当帰芍薬散などがありますが、個々の状態を見極めて処方される事になります。
一般に漢方薬は直ぐ効かないと誤解されているようですが、効果の早い時には1-2週間で体調の変化に気づきます。 最近はニキビの患者さんも局所療法と合わせて漢方薬治療を行い、良好な治療効果が得られています。 瘀血は生活習慣病を促進しますので、明らかな症状が出る前に瘀血の治療を行い、発病を未然に防ぐ事が肝要です。