予防接種をお勧めします
筑田先生から原稿が続々と届きます。私は書いている暇がありません。本日もよろしくお願いいたします。
欧米諸国に比べて日本で予防接種率が低い理由はもうひとつあります。それは、予防接種の副作用が大きく報道され、メリットよりも、副作用によるデメリットが強調されてしまったことです。
予防接種は集団として疾病にたいして免疫を持ち、疾病を流行らせないよう、みんながかからないようにします。そして接種した本人にとっては、感染源と接触しても感染発病しにくくなり、感染した場合でも症状が軽くなるというメリットがあります。
例えば、日本脳炎の患者発生は国内で昭和41年までは年間1,000人を超えていました。ワクチンの普及と媒介蚊の減少と環境改善で最近では年間10人程度となっています。
ポリオ(小児麻痺)に関しては昭和35年国内で大流行しました。美夏DR.の同級生でもポリオのために麻痺の残った方が何人かいます。39年から国産のポリオワクチン接種が開始されてから患者発生は激減し、6年後にはほとんど発生していません。
WHOによるポリオワクチン接種強化運動によって、平成12年に西大西洋地域で、14年にヨーロッパ地域でポリオ根絶宣言が出されました。
麻疹(はしか)については昭和41年に麻疹ワクチン接種が開始され、予防効果は有ったものの副作用が問題となりました。しかし、平成10年からは副作用の少ない麻疹ワクチンが製造され、その心配は改善されました。
麻疹ワクチンの接種率は年代、地域によって異なり、日本では90-60%と推定されています。他の先進国では80-96%であり、WHOの評価としてこれらの国は麻疹ウイルス排除期であるのに、わが国では中国、インド他の途上国と同じ制圧期と評価され、最近でも年間10-20万人の感染者が推定され、数十人の麻疹(はしかによる)死亡者が報告されています。
欧米の死者の2-7人程度とは比較してみてください。麻疹(はしか)の予防に対しての対応が遅れていることを認識し、早急に麻疹撲滅対策を進める必要があります。
麻疹を撲滅するには、予防接種を徹底させるしか手段はありません。
予防接種の徹底で根絶された感染症に天然痘があります、昭和21年には18,000人ほどの発症があり、約3,000人が死亡しています。
しかし、種痘の徹底により昭和31年からは国内での発症は無く、世界各国でもWHOの世界天然痘根絶計画にそって天然痘の封じ込め政策を徹底し、昭和55年5月にWHOは天然痘の根絶を宣言しました。
まさに予防接種による輝かしい成果の証といえます。
ところが予防接種による健康被害が出てしまうと、その副作用や合併症が大きくマスコミに取り上げられます。その疾病にかかって受ける損失と、予防接種を受けて疾病にかからないまたは軽くすませることのメリットを比べることが重要です。
そして、人が宿主で他の動物など中間宿主の無いウイルスでは、予防接種で世界から根絶出来ることから、人類全体の利益も考える必要があります。
このような利害得失を比較して考えることなしに、疾病の怖さよりも接種によるデメリットが強調されるのは残念なことです。
国立感染症研究所のウェブサイトはこちらです
http://idsc.nih.go.jp/index-j.html
予防接種による副作用を教えてください。
注射した場所に、痛み、腫れ、固くなる、赤くなるなどが10%くらいの人に出ます。数日で軽くなります。
時に発熱や倦怠感を覚える方もおられます。ワクチンにたいして身体が反応しているのだと思います。
アレルギーの反応で血圧がさがり、呼吸困難になるようなアナフィラキシーショックの報告もありますが、接種後30分以内におこるもので、この30分は医療機関の中で経過を見ることが義務とされています。
麻疹ワクチンで発症したという副作用はなんですか?
以前の生ワクチンで、麻疹に良く似た症状がでたり、アレルギーの強い症状がでたりしました。最近ではアレルギーを引き起こしたゼラチンの入らないものが使われており、ワクチンそのものも改良されています。
美夏Dr.はどう考えますか?
水痘は早く見つければ、抗ウイルス薬もありますので、あまり重篤にならずにすみますよね。自分の子供は周囲で流行っているときに、毎日注意して水疱を見つけてすぐに、抗ウイルス薬を使いました。
麻疹は、怖いからねえ、1歳になってすぐに接種しましたよ。もう以前の話になりますけれど。
posted at 2006/11/16 17:49 | kojitomika |