マラセチアという真菌の話
春が過ぎて、半袖になる頃には皮膚科では抗真菌剤の処方量が増えてきます。美夏クリニック でも毎日処方しています。
以前皮膚の表面には260種類もの微生物が常在菌としているようですというお話を致しました。
治療の対象になる真菌はおおむね3種類。常在菌のマラセチア(癜風)とカンジダ、それと他からもらってしまう真菌(常在菌ではない)の白癬(水虫)です。
真菌とはカビです。高温多湿が大好き。春から夏にかけて元気になってしまいます。
マラセチアの作る皮膚の疾患はおおむね3種類です。常在菌ですので、通常より増えすぎたときに(マラセチアは脂が大好きな真菌です)、病気を作ると考えていただければよいと思います。
1、癜風
腋の下や胸、背中などに、夏になると茶色く色がつく、または色が白く抜けるという症状を出します。海に行ったら身体がしみになっちゃったなんて人の中に、この癜風の人がいます。顕微鏡でマラセチアが多く検出されれば、確定診断となります。
注意が必要なことに色がつくまたは抜けるという「色素失調」は、マラセチアが普通の量に減少しても、元に戻るのに時間がかかることがあります。
2、マラセチア毛包炎
胸、肩、背中などの小さくて赤みのつよい、ややモノトーンのニキビが、マラセチア毛包炎のことがあります。ニキビ治療をして、上手くいっていない場合には、抗真菌剤は試してみる価値があります。
額から生え際にかけてのニキビも同じです。
夏季座そうと呼ばれる夏に出る身体のニキビもマラセチア毛包炎かしら?
3、脂漏性皮膚炎
頭皮の痒み、フケの症状であることは有名ですが、春から夏に鼻や鼻の周辺、眉間、額がざらつき赤くなってくるのも脂漏性皮膚炎です。
抗真菌剤は大きく、アリルアミン系とアゾール系と呼ばれる二つの種類があります。白癬以外の真菌にはアゾール系のほうが感受性が高いとされています。外用ではニゾラールという薬が代表的です。
外用薬の吸収量は身体の部位によって異なります。顔は大体1日2回2-3週きちんと塗布いたしますと、真菌が悪さをしている部分については改善されます。身体はもう少し期間がかかって、4-8週と思っています。1日2回きちんとというのがポイントです。わたくしの経験則によりますので、もしデータ上間違っていましたら、ごめんなさい。
マラセチアは常在菌です。その同じマラセチアがどうして場所によって違った疾患を作るのか、とても興味があります。この春の皮膚科学会で帝京の渡辺先生がマラセチアでも、疾患によって種類が違うんだという発表をされました。(プログラムにそう載っていました。美夏Dr.は参加できなかったので、実際のご講演を聴いておりません。ごめんなさい)
ただ、患者さんを拝見していますと、マラセチアに好まれやすい人がいるのかなあと感じています。例えば、癜風を起こしやすい人は脂漏性皮膚炎やマラセチア毛包炎をも合併しやすいよう。文献的でなくてすみません。
また、常在菌なので当然なのですが、脂の出やすい時期になると、再発再燃しやすいのも特徴だと思います。皮膚の状態を良く見ていただき、必要な時期に必要な量と期間きちんとお使いいただければと思っています。
posted at 2007/05/12 11:05 | kojitomika |
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